秀先生は、STAYGOLDの日高の初恋の高揚と失恋のひりつくような心情表現に感情が共鳴して以来、単なるキュンを超えた表現の吸引力に惹かれてやまない作者様。果たして本作は?と思ったら、タイトルからは予想もつかない感情を揺さぶる大波にさらわれて
、思いもよらぬ地平に辿り着いて涙を流し、またもや初恋の高揚と痛みに共鳴し、その切なさに浸ることになった。
まず登場するのは、同じ高校の理事長の孫のリッチな明治と、貧乏な三崎。2人の淡い感情から始まる恋物語を主旋律としながら、60年前の終戦前後にわたり描かれる、明治の祖父である理事長と三崎の祖父との、戦時下における生命にも関わる出来事を交えた切ない想いが、重厚かつ鮮烈な副旋律を奏でて進行していく。この祖父世代の初恋が、60年も前に抱いた想いなのに、いつまでも、その時のトキメキを保ち、いまだに心を掻きむしるものであることが、漫画ならではの表現で描かれているのが頗る上手く胸を打つ。自分にとってこの作品に対する評価の大部分は、祖父世代についてのもので、叶うことのない恋の痛みと美しさを描くのが上手だなぁとしみじみ思う。また、三崎祖父は、鬼籍に入っているのだが、彼が抱えていた想いの深さに気付く場面もあり、もしや、あの世で再会するつもりだったのか、と想像するのも楽しい。
5月7日までSALE中。タイトルで敬遠していたら、勿体ない。
ネタバレなしで、流れに身を任せ、どのような感情の動きが生まれるのかを楽しむのが相応しい1冊。
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