最後の告白シーン、ロマンス堪能。彼ギルの言葉の数々で二人の3ヶ月を彼視点で振り返り、もう一度頁を戻って出会いからここまでの軌跡を、辿り直そうと思わされる。二人の日々の中にあった愛の存在が、彼がその時々の心境や動きを語ってくれたことで改めて瞬
き出す。
HQの一典型を踏襲しつつも、ヒロインデボラを悩ます、二人の間の様々阻害要素が巧みに散りばめられ、ヒロインの心情に寄り添いやすい進行。
一冊の中に豊富な材料とイベントがあるのに詰め込み感無く、デボラの生活ぶりと周囲の人間がよく描写される。
絵に力を感じる。凄く表現力を持っているコマが多く、質感のあるタッチが醸し出すプロフェッショナルなアピールが、読み手の私にストーリー以上のドラマ的な演出力を感じさせて良かった。
HQなら散々見てきたようなベタなシーンも、見つけてくれると思わなかった、との台詞が、デボラの此迄を見てきてとても理解できるし、ギルの方にも唐突感ある行為とは思わせない流れがあって、予想させつつも、予想以上の彼の内面をクライマックスの切り札に切ってきて味わうことが出来た。
既に随所にギルはデボラにどれほど想っているかを伝えてはいたので、結構ラストシーンまでに割と惜しみないごちそうはあったのだがー。
如何に彼ギルがヒロインのデボラを愛しているか、愛の言葉の数々に、こんなタイプの女性だけはだめだと思っていたのに愛してしまった、頭の中からどうしても追い払えなかった様子まざまざ。人を好きになるときは、好きになってしまった人物を前にしたら、それまで冷静なときに想い描いていた理想像ではない相手でも、どんなに抗っても相手の存在が入り込んでしまう、まさに、出会ってしまった、ということなのだなと、使うと上滑りしそうな言葉ではあるが、「運命」が二人を引き合わせたように感じさせるストーリー。
一冊の中で人を好きになる喜びも切なさもしっかり詰まって、その流れの先のゴールテープに向かい見事に両手を挙げて二人でフィニッシュするのを、ゴール前に陣取って見させてもらったような最終数頁だった。
シルビーに対するギル等の反応がストレスとなり、悪役も中途半端にならずに撤する展開をするので、彼の同僚がハッピーでないのは心残りだ。幸せになって欲しい。
顔に占める眉の分量にバタ臭さがなく、口元も肉感的ではないからか、メインキャラなのにギルが淡白な印象。
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