ネタバレ・感想ありだいらんど【新装版】のレビュー

アダルトな作品の多い作者さんですが、こちらは「かつて子供だった大人のメルヘン」です。作者さんの趣味を詰め込んだようで、そういうのっていいよね。ずいぶん昔に漫画好きの知人に勧められて読んで、また読みたくなって買いました。

既存の童話を寄せ集めたような不思議な世界、「昼の国」「大人の国」「子供の国」「動物の国」「海の国」「夜の国」と、それぞれの国でのエピソードを連ねて、ゴールに向かって移動していきます。明るすぎる様子や取り込まれていく様子にうっすら不気味さがあって良い。
特に「子供の国」のジョセのエピソードが、切なさがあって良かったです。ジョセのためだけにでも、この世界を作った価値はあると思うので、「黒幕」さんを慰めてさしあげたい……主人公は強い芯をもって自分の選択を貫いたけど、私は「黒幕」が作った世界、良いと思うよ！
作り物の世界の作り物らしさ、垣間見える登場人物の背景、力業でちょっと笑っちゃう漫画らしさがありながらも無理がなくエモいクライマックス、主人公ヤクザ設定だったからこそあのオチも夢があって好き、よくできていると思います。
キャラクターも良くて、メリーアン姫は健気で可愛く、ルーシーは謎めいて魅力的(過去も気になっちゃう)(転移直前の状況を問われた時の答えが妙に自分に刺さって、彼女の胸の内はいかばかりかと勝手に想像して悶える)。
健気な「姫」の真心が男を「王子」にして、「王子」は「姫」を救い出す……そんな素敵なおとぎばなしだと、私は思います。

実は、絵柄はけっこう苦手なんですけど、この話を別の絵で描いたら違うよな……って読了後に思えるようになる作品で、そういう「絵柄を超えた力」のある物語って好きです。
〜〜〜〜〜
2025年5月現在、読み放題に入ってます。まぁ、いいから読んでみませんか。