いくつ歳を重ねても男は男で女は女、言葉にしないとわからない…等々、テーマは普遍的で目新しい物ではありません。男女の恋愛モノとしては王道で、トリッキーなことはしていないのですが、構成が上手い。熟年夫婦のいざこざを一本道で追っていてはつまらない
が、夫婦の子供(アラフォー)の恋愛(結婚?)感と飼い猫の失踪、個々の事象と時間軸が折り重なって紡がれ、最後に収束する。(そんな大げさなものではないのかもしれないですが。)特殊な事情を持つでも無し、何か大きな事件が起こるでも無し、平々凡々な日常を切り取っただけなのに、物凄く壮大なドラマに仕上がっている…。と感じました。これが1巻でまとまっているなんて…。人参と玉ねぎで普通に誰が作ってもカレーはおいしくなりますが、全く同じ材料を使ってプロに作らせればめちゃめちゃおいしいカレーが出来る、みたいな感じでしょうか…。同じテーマで別の方が描いてもここまで面白くならないのかと。キャラクターの感情表現など細部の気配りが本当に上手い。西炯子さんという、ベテラン作家の成せる業だと思う。
全然関係ないのですが、読み終わった後「出逢った頃のように」という90年代の曲を何故か思い出しました。出逢った頃のようにときめき大事にして、季節が変わっても色褪せないはずだよという感じです。(なんのこっちゃ)
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