戦争に行ったまま帰ってこない幼なじみを待ち続けた男と、ある日突然姿を現したその幼なじみの儚くも確かな関係を描いたお話。
戦中ならではの混沌とした時代の後ろ暗さと戦後の敗北感の中で生まれる新しい時代への希望が、時代設定や物語の背景としてとて
も良く効いています。そんな時代だからこそ、鷹彦の放蕩ぶりがワガママでもあり、無茶でもあり、反抗的であると同時にキラキラ輝いて見えたのだということが伝わってきました。また、そんな中でもひたむきに信念を持って生きる葵。いつもは冷静な葵も鷹彦の前だと感情が抑えきれなくなるし、そんな葵を見て満足そうな鷹彦にとてつもない愛を感じました。
二人の関係はもしかしたら鷹彦の出征がなければ変わらなかったかもしれない。今生の別れを前にしてお互いを求め合う姿はとても刹那的であり、今の時代では見られない生きることの儚さが実感できるシーンでした。こんなにも切ないえちシーンもなかなかないと思います。ただ一つ気になったのは鷹彦の心情。元から葵を好きで、やり場のない想いを発散させるために女の元を転々としていたのか、本当に女好きなのか。その辺の鷹彦の気持ちが正確に汲み取れず、もう少し心理描写があったら良かったなと思いました。
再会後の二人は今を前向きに生きることを大事にしていて、戦争を乗り越えた人間の強さを感じました。大切な人にきちんと向き合おうと変わって行く様は人としての成長していく姿であり、今を大切にという実感そのものだと思います。二人の関係が戦争を通して変わっていく、時代背景との絡め方がとても上手い作品です。
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