彼のヒロインの幸福を願っている気持ちが痛々しい。そして美しくて、深い。
一方ヒロインの気持ちが描写されるほどに、どうにかならないものかと思う。
「わたしは君を抱き上げることも/走って追いかけることも/馬で颯爽と荒野を駆け抜けることも
できない」「ワルツのステップを踏むことも/ひざまずくことも/できないが」「君を守る」。
そうそう、最後の言葉こそが欲しかった言葉よね、と、ヒロインに同調してハッピー気分を貰って読み終えた。
彼の決意、それだけが、この話の唯一の欠けていたピースだった。無理もない。愛していればこそ、自分より幸せにしてやれる相手が居るだろうと考えてしまう。その気持ちに読み手はやられてしまう。
本当に愛していればこそ、のことなのだから、胸に来る。
そして、叔父様を通して語られる言葉、決めるのは彼女なのだ、との真理も、これまた一本綺麗に物語を貫いている。まずは動かないと始まらないものだが、自分じゃダメだと思っているから解けない自縄自縛状態。
彼がヒロインの事故を前にして、自分の身体が自由に動けたら、もっと出来ることがあったのにとの自責の念で一杯なのも、よく伝わる。客観的に精一杯のことをしてるのに、当人には自分の不甲斐なさばかりがのしかかり、出来なかったことのあれこれに耐えられない。
ヒロイン、彼に伝えてきているけれど、結局は彼次第なのがもどかしいし、辛いところよね。そこも、読んでいると、ハピエンと判っているのを読んでいることに安堵する。同じ館で過ごすクリスマスシーズン、初めの頃の嬉しさと興奮が、自分を受け入れてくれない苦しさに変わり、それでも諦めきれないところが、描かれて。
不幸な事故によって自由にならない身体。ただそれだけのことなのに、彼にとっては、全然それだけのことでない。それが大きすぎる。
乗り越えるのに力を貸した周囲の人間たちと、宿り木の風習ありがとう、というお話。
周囲のサポートがほんわかと効果を上げる。
表紙、キスの絵は二人のストーリーではキーだけれど、どこか気恥ずかしい。
タイトル、彼の想いに繋がる言葉だが、今一つの感がある。
そんなところから、星は4.5と思って欲しい。
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