人の世話になりたくないという心意気は決して悪くないが、ヒロインに一切の甘えが無い分、胸が痛む序盤の彼女の困窮ぶりがどう結末迄に変わるのか、その描き方に興味をそそられた。
序章に登場のジャック、既にどんな目に遭ったかを印象づけて、彼の女性不
信や孤独感の種まきはされている。読者のこちらは、どうヒロインと関わって心が向いていくのか、二人の関係進展をどう読ませてくれるのか、もったいつける様なわざとらしさを感じさせられず頁を手繰れた。レディ・カーヒルが強引に関わるのが話を面白くする。それは、火にくべられずに済んで良かった、とか、マーサが思いきったことをやってくれて良かった、とか、初めから危ない綱渡りでハラハラを煽られてから。そして何より、その煙たがられている高飛車ばあさんが、目鼻の利く、いい意味で遠慮しないお節介人間で良かった、となる話。彼女の人間臭さが話の運びに色付けする。不幸や災難から抜け出すというのは紙一重だと感じる描写。
フランシスも作家都合の極みのような立ち回りをするも、ハンサム設定、遊びもしてきた大人設定、などが少々話の行方への目眩ましがあってアクセント。終盤再登坂で中途半端さが多少は減ったが、性格を表す箇所が多い訳でなし、危機救出場面は正直特に不明瞭な立ち位置。けしかけ、焦らし、妬ませ、仲介し、手を貸す。友人として、という辺りは表されているが、読み手に不親切。
ヒロインが自分は結婚しない一生を送るとの覚悟を持っていた経緯への、周囲からの扱いのむごさが、なんとも割り切れない。彼女になんの直接の被害を受けたこともないのに、苦しめるためだけに正義感の仮面で言いふらす(今で言う拡散)様な人間達の醜さ。そういう無責任人間達がのうのうとしている事、将軍登場云々程度で片付けられてしまった事が、座して読むだけのこっちこそ正義感をかきたてられた。
一方、二人それぞれに降ってわいた幸運も、なんかなぁ、という感じはする。どうも話が展開安易な印象、余計なお話っぽさをつけ加えてる。
ハーレクインだからでしょ、と言ってしまえばそれきりだけれども、読み物としてどうなのか。
マーサ、レディ・カーヒル、ジャックの友人達の厚情。レディ・カーヒルの尽力によってもたらされたケイトの事、更に次はジャックにも、となると流石に本当はこれはただラッキーというのだ、と感じる。
文章は分かり易い。手垢感のしない話。
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