先に読んだコミックは、トントン拍子にうまく行きかけるのを、一旦「契約関係として結び直す」感じだった。そこが、揺り戻しの様で、奇異な感じがしたものだった。
こっちのノベルの方は、取引の関係に至る彼サイドの考え方が表されていた(全編なにかと饒
舌)ので、契約の形に便乗して二人が親密さを増す流れに進むのが、自然に受け止められる。
ただ漫画の方は、契約がダラダラ一本調子を回避する試み的で転回部。こっちの小説の方は、デイジーがあれこれ思い巡らすのが、取り立てて山谷の無いこの話には彩りとなる。期待が低ければ、プロポーズに向かうことの喜びはいや増す。だが、その一見慎ましく、そして、思い上がった勘違いとは無縁のヒロインの勝利は、彼の好意表明に対して警戒怠らない態度を取る一貫性に通ずる。期待しないよう自分を諫めるのも謙虚で素敵だが。そこ凄く判るが。彼が挑んで来るタイプで良かった。
彼女には富裕層が持っている富自体への怒り(ビリになればいい、などと)があるかと思えば、その階級の消費生活ぶりへの卑屈なまでの心理的距離感と、またそれとは丁度背中合わせの高いプライドと自力でやる心意気と。根っこにお金持ちへ理不尽なくらいの先入観というか、階層全般への闇雲な敵対心がある様子、彼のあまりな金持ちぶりを叙述することで、当初ヒロインが抱いた憎しみや住む世界が違うという意識、強調し過ぎて、強い引け目がどう変化して受け入れる方向になったのか共感しづらい。その危険を回避させるためか、第一印象からその後も再三、ヒロインが彼の外見にセックxアピールを感じたことを打ち出しておき、橋渡し材料としているが、逆に過度の警戒感から反転の身体の関係の定着化となる二人の取引内容がどうもしっくりしない。
彼の華麗なる資産家ぶりをここまで語られると、お話がいくらヒロインがお金目当てではないとの構造であっても、読者にはヒロインを通じてそんな億万長者との結婚に漕ぎ着ける仮想体験をさせていると思える。
そこが何となく、物語の中の「無欲の勝利」と自己矛盾。ヒロインが、持っている者に対して、対極の対抗意識、いわゆる貧乏人の僻みと共存していく未来を、読んでいて私は信じきれない。
よっぽど彼女の他の家族の方が屈託無いかなと期待したくなる。
さて、リフォームを要するのは1階部分だけだったのか。邸宅の案内はプライベートスペースの2階には及ばなかった。
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