収入以上買い物をしては返品を繰り返すヒロイン、ローレン。これも買い物依存症の一種なのではないだろうか? 息子も食欲に任せて育って太め街道を行くようだ。
そして、彼が自分の本当の立場を伝えなかった唯一といえる隠し事よりも、彼女はストーリ
ー中でもっと嘘をついている。嘘はダメというつもりはないが、多すぎる。
母親の男性に対するあからさまな値踏みや結婚観に否定的でありながら、反発しても、結果としてはローレンは母の意に沿う状況に。
彼の正体を冒頭で伝えないで、進行の中で、実はー、とする手法でこの小説は展開しているのに、読者のこちらは作品紹介で既に知っている。そのため、ローレンが素性もそれほど知らない(新郎の友人という以外は)男性と、シカゴで一夜を過ごしていることのヒロインの受け止め方、ヒロインがその後警戒のバリアーを張りたがる心境などへの、こちらの同調感覚を妨げてしまった。
二人が過ごしたタウンハウスでの暮らしの描写が良かった。
長年ローレンに想いを寄せていた男性の、話の中での役どころもどこかパンチ不足。
ダブルクォーテーションマークが文頭片方にあり、締めのマークがない頁があった。小さくても誤字脱字はクオリティを下げる。堅の字も不適切だったかと。
王位云々のゴタゴタが、「なぜ王子がそこに?」という、彼の存在の必然性を表すためだけに設定され、まるでダブルクォーテーションマークのもう片方がなくて、閉じ忘れられたみたいな感じだ。
第二第三の王位継承者達も無防備ぶりがお兄さんに負けてない。しっかり運営されているという小国、辣腕を振るっている女王が居ながら、そのお粗末なリスク管理はないだろう。
尤もハーレクインでは“王族が間近に居た”型が多いが。
双方共に、父親は不在ではないのに、面白いほど数行描写。母親たちは強い存在の主張がなされているのと対照的。
妊娠にまつわる不自然さも幾つかあり、よくある妊娠初期の兆候はスルー。個人差はあるものとは思うけれど展開が強引に感じる。
シカゴでの出会いと、シェアハウス生活へのローレンの躊躇をローレンの尼僧ぶりで根拠づけ、ヒロインとしてのキャラを正当化、会った日に忘れられなくなった相手との再会という「偶然」を、有機的な繋がりに変えるために、何とかささやかな伏線が仕込まれているのだが、どこか鼻についてしまう。
お友達夫婦の噛み方も微妙。
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