本作品も著者の長編・短編を問わずよくある未亡人もの。しかし、シーモアの作品紹介を事前に読んで、特に期待を持った。配偶者の四十九日明けに、まるで故人があの世から直接送ってきたかのようにヒロインのもとに宅配便が届く。手紙とともに入っていたのは、
いわゆる大人のォモチャ。孤閨の淋しさに耐えかねていた中、手紙の言葉に導かれるように、ヒロインは玩具を夜の供にするようになる。故人の生前の手配による贈り物はその後も断続し、やがて女は亡夫の事業の後継者との只ならぬ関係に入り込んでいく。こう書くと、やっぱり多くの他作と同じではと思われるかもしれないが、本作はそれを堕落と感じさせない線にとどめ、貞淑なヒロインがしとやかさを失わないよう、上品な工ロさを保持している。そうして読み進むうち、終わり近くに藍川作品のファンにも嬉しい「贈り物」が。処女作『華宴』の主人公の名前が登場する。題名に「宴」の一字をかぶせているのは二作品を結びつける意図か。かかる演出を抜きにしても、全編にわたりしっとりとうるおいのある文体で貫かれた佳作である。
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