冒頭にプロローグとエピローグを並列、連作風の構成が粋なユーモア人情ミステリ
生後八ヵ月の女児が誘拐され、身代金を要求される。だが、警察の介入に気づいた犯人は接触してこず、赤ん坊は行方不明のまま時が経つ。二十年後、下町に住む三人の娘のうちの誰かが、誘拐された娘らしいとわかってきたのだが…。
●多岐川恭(たきがわ・きょう)
1920年福岡県生まれ。東大経済学部卒。戦後、横浜正金銀行をへて毎日新聞西部本社に勤務。1953年『みかん山』で作家デビュー。『濡れた心』で第4回江戸川乱歩賞を、翌年には短編集『落ちる』で第40回直木賞を受賞。以降、推理小説と共に時代小説も旺盛に執筆した。