今でも日本の問題点として指摘されるリーダーシップや意思決定の不在。
あの戦争の時も、首相も天皇も最終的な決定権はなく
誰も望んでいない開戦に押し流されていった。
典型的な無責任国家は今も現在進行形である。
日本が戦争への道に転がっていった過程を見ると、
「決められない」「時流に便乗する」「空気に流される」
「見通しを誤る」「先送りする」「棚上げする」
といったことがある。
そして開戦後も多くの指揮官のリーダーシップの不在により、
ときに不決断を引き起こし、いたずらに兵力の消耗をもたらした。
戦局の前半では快進撃を続けた日本軍も、
その後、数々の作戦の失敗から学ぶことなく、
雪崩を打って敗戦へと向かったが、
その裏では、組織が陥りやすい意思決定の矛盾や、
大本営と現地とのコミュニケーション不全といった、
極めて今日的な問題が起きていたのである。
そして先送りによる最大の失敗は、「降伏決定の先送り」である。
天皇の「時局の収拾も考慮すべきだ」という敗戦の覚悟を、
戦争指導者全員が共有できていたら、
国民の犠牲者はもっと少なかったはずだと考えられる。
こうした日本的な組織の特性は、
戦後の日本の組織にも無批判に継承され、
今日の日本企業の凋落と衰退を生み出す大きな要因となっている。
赤字事業の売却、撤退の判断…がその典型的事例だ。
決定が遅れれば、損失が膨らみ、いよいよ処理が難しくなる。
本書は日本軍と現代日本に共通する組織的特徴(欠陥)を、
これまであまり指摘されてこなかった
「不決断」「先送り」という視点から読み解き、
現代日本人の教訓とするものである。