7巻まで読破後。さすが角川スニーカー文庫というべきか、ストレスになるようなひどい誤字脱字誤表現は無く、文章も整っていて読みやすい。途中で失速するかと思いきや、7巻時点ではまだ話の流れを保ちつつ新しく深く展開している。
流行りのポップな異世
界ラノベかと思いきや、きちんとテーマ性があり、それでいて重くなりすぎず、全体としてよくまとまっている作品。もちろんベタな設定や展開も踏襲している部分はあるものの、ただのコピーではなく話としての芯が感じられた。
作者曰く、柱としてはレッドとリットが心からスローライフを目指す、二人の穏やかないちゃこらの話。なので変に主人公が無双しすぎることもハーレム化することもない点は安心して読める。よくある「スローといいつつ無双してんじゃないか」というこっそりオレツエエにはならない。レッドの強さはそもそも人外の領域には全く届かず、むしろ精神的なものであるというのがこの話の肝なのだろう。
主人公達がのんびりと穏やかに暮らしたいと心から願い、戦いから遠ざかろうとする点で紛れもなくスローライフであり、そしてそれを難しくしているのが理不尽で不可解で謎の「加護」という世界の設定であり、その「加護の衝動」といわれる不可避にして強制的に与えられる本能との付き合い方や葛藤を描いている点が興味深い。
主人公達は紛れもなく英雄達であり一般人とは隔絶した戦闘能力はあれど、最前線からドロップアウトし日々なまっていくことは避けられず、また世界は全く安全ではなくどこかで戦争(魔王の侵攻)という危険と絶望が進行中であるというのも、スローライフを掲げる話としては変わりどころ。
見どころとしては、メインキャラ達の葛藤と、レッドとリットの惚気のベタベタ度。レッド達のベタベタは巻を追うごとに、特に5巻以降では完全に砂糖吐くレベルに達しているのでこれは好みが分かれるところだろう。スローライフを強調したいのかもしれないが蛇足な気もする私見。読んでいて唯一だれる部分。
そしてメインキャラ達はもちろん魅力的だが、誰もが嫌うであろうキャラもそれぞれいい味を出している。アレス、アルバート、レオノーラ、その他雑魚キャラ…それぞれメイン達よりも深く追求されているのではなかろうか興味深さ。
蛇足だが、コミカライズもオススメ。リットとルーティの可愛さがとてもよく表現されているので分かりやすい。
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