藍川京作品愛読者のやなぎやこ、ここでは本アンソロジーに収録されている「紐」についてレビューします。
本作は既婚のミドル男女が織りなすロマンスで、舞台ももはや著者の庭先といっていい京都の町。女性の、相手の男の配偶者に対する細やかな心情も描か
れ、また性愛小説の核たる絡みの部分にも十分な長さが確保され、手堅い短編に仕上がっている。ただし、作中には、ソフトながらSMプレイも少なからず描かれているが、小道具として題名ともなっている紐の迫力が弱い。紐を使ったプレイがなんとなく浮いているのである。アブノーマルプレイに関心のないやなぎやこ的には不要とさえ思え、倒錯なしでねっとりと書いても十分いけるシチュエーションではなかったかと思える。それでも女性が魅力的に表現され、ファン以外の読者も読んで損はないと思う。そしてアンソロジー全体の評価であるが、各著者の作風も読者の嗜好も広がるためニュートラルとさせていただいた。
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