著者が、主に山小屋主人たちに聞いた山の実話。最初は雑誌連載、それが単行本となり、出版社を山と渓谷社に変え「新編」として復活、さらに「定本」として文庫化。四回生まれた本だ。同時に読んでいる『山の霊力』町田宗鳳(山と渓谷社)に山の神の最も古い形
はオロチ信仰だとあって「なるほどなぁ」と思ったのだが、さしずめ本作も脱皮して生まれ変わる山の神、山の生命力が宿っているのではないだろうか。あとがきに「ミステリーじゃない」と言われたこともあると書かれているが、刺激的な怪談を求める人には物足りないかもしれない。しかし、毎年数多の怪談本が生まれては消える業界にあって、三度生まれ変わって(脱皮して)生き残っているこの本には、それなりの魅力と力があるのでは、と思う。
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