派手な絵柄ではない。その分、二人は生きる姿勢が真面目なことがよく伝わる。
手の内で転がされた二人の若者達を見守る大人たちがニクい好好爺ポジション。まだ年寄りの域には遠く、だが分別のある、胸が温かくなるような、出来た大人たち。
いい話
、というタイプの、細やかな情や、人間関係の濃さにくるまれて育ったラブストーリー。
初々しくて、若さゆえの、世慣れた感じのない、計算高さや小狡さを持ってない二人の、真っ直ぐの恋路を全力応援する、年代の近い周囲側の気持ちに同調して読んだ。
私も昭和の時代から、規模こそ亀とスッポンほど違え一部は同じようなことしてるが、成人後までとは凄いことだと感服。
彼女は確かに、無防備過ぎる。それが却ってこのシチュエーションでは幸いしたが、普通はそれはダメだろう。警戒しなくては!彼だからこそ信頼した、というのはあると分かるけれども。
アメリカであとをたたない銃犯罪を連想してしまうような、飛び道具の登場は、息が暫し止まった。
ストーリーが引き締まりすぎて、穏やかだと勘違いしそうだったムードに、本当は、酔っ払いにからまれ、身辺に不審人物が現れ、などなどずっと油断ならぬ展開だったことを思い出させられた。
しかし物騒なそれは、外敵に向けられて持ち出されたものではない、というところに、本作品の穏やかならぬ自衛の思考が出ている。
恋愛音痴は人のサポート(お節介)なくては、後ろからの後押し(説得)なくては、成就しなかった、という、手取り足取り構造に苦笑する。
ガブリエルは「天使」でなくて人の子、雨に打たれても冷ませない恋情を映すシーンが良い。水に濡れる姿はやはり色気が欲しいところ。もっと視覚的に表してもよかった。
天使は名前だけのようなものだが、渋いオヤジキューピット達の働きでストーリーは回ってた。
もっともゲイブに言わせれば、「僕にとっては君こそが」天使だとのこと。
邦題に「堕ちた」との語があるが、「堕天使」としてしまうと全然意味合いを変えてしまう。だからこそ「堕ちた」としておき違う趣旨で用いたかったのかもしれないが、それでも、連想は避けられない。
二人とも互いに好きになってこれまでのところには居られない、という意味では、いずれの意味も兼ねている、ということになるか。
地味な絵柄の味わいは認めるが(冒頭に書いた通り)、表情と角度の変化はもう少し欲しかった。
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