HQの一大ジャンル、記憶喪失物。記憶喪失になってしまったヒロインの、心細げな感じ、訳の解らない環境に身を置いている彼女の新しい日常への難しい適応、周りの戸惑いと新鮮な驚き、本人の手探りのコンタクトの波紋、等々先生の絵は読んでる此方に伝わる力
がある。
また、先生の描かれる男性は純粋にかっこいい。そして、懐の大きい、大人の余裕を感じさせる感じがあるために、突然の記憶喪失で生活が一変したであろうヒロインに漬け込むずるさのない紳士としての信頼感を持てるタイプに見える。この男性像が描けるために、ストーリーが、ヒロインにとって悪くはならないだろう、という安心まで読んでいると維持できる。
「シンデレラに靴を」この作品タイトルにシンデレラの付く意義はあるのか?話のなかに、靴を置いていったくだりに触れているところがあったが、なお納得できない。
このアンガス、戸惑いながら、ヒロインと過ごすカジノの一日が良かった。やはり、景色のコマなども美しくて安っぽくなくて、一枚の絵のなかに入り込んで行けそうな、西海岸?的雰囲気がよく出ていて誘われそう。
「愛を忘れた氷の女王」この作品こそヒロインはシンデレラ的位置付け。ただ、入れ替え人生の展開があるので、主軸はこっち、人生リセット。図らずも、男性もキャリアの社会的成功も全て手にした
本当のラッキーガールに。好きになった人には残念な目にも遭う。
普通に、間違えられた人の元婚約者はモテそうな感じだが、HQお得意の、女性から人気を集める描写特になし。意外だが、モテモテ設定でない話も、そんなくだりがお約束みたいについてこないのはうっとうしくない展開。自分にだけ素敵、というのもアリだから。でも藤田先生の描かれる男性であるから普通に素敵な上に、暗闇の中からヒロインを救いだすかのような手。そんな大変なときの、最も苦しいときの彼の存在は、ヒロインにすればどんなにか素晴らしく、よりよく見えたことだろう。
ただ、婚約解消タイミングと事故の前後関係、つまり、まだ指輪が効力を放っているかのような機内の会話、そして、解消後なのに結婚予定前提の会話が繰り広げられるところが、何となく、しっくりと来ないのだが。
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