庇護は徹底していた。甥っ子の婚約者だ、こみ上げる愛しさも隠し通した。
これは男性にとって、一言で「忍耐」と片付けられるほど生易しいことではないだろう。2年より短縮となっても、厳しい修行僧の様に耐えた。
エドマンド、彼は生真面目で繊細で不
器用で温厚で、ヒロインとの日々で心がどんどんほぐされていってしまう。ヒロインの魅力に抗うことの大変さを描写し、一方、少しずつ彼への信頼の度を増すヒロインは宙ぶらりんの状態。ここは、ヒロインをほったらかしの婚約者殿が、「悪い奴」というくだりがない。
メイン二人が相手を純粋に、一歩ずつ納得の、感情の醸成過程を描写。
募る想いをついに眠る彼にヒロインが伝えるシーンは、それでも尚そこでは進展ないことが、読み手のこちらに歯がゆさを燻らせる。そこにも、彼のキャラが反映されている。まだ帰国の報の無い甥っ子のその元に、返してはいないのだ。そこを語らせずともこれまでの彼なら、そう来ることを、可能性として感じ取っていた。合理性を散々語ってきたから、読者は、一旦ここでは肩透かしを受ける。
しかし彼の「決め」のシーンに於いては、その時の場面が彼の力となるのだ。
ヒロイン、伝えるって大事だね、と思わずにはいられない。
ハザマ先生の描かれる男性は時々ビジュアルで私には男性成分不足なのだが、この作品は、彼の我慢が男らしさを上げている。
本当にヒロインを大事にしたからに他ならないからだ。
年齢に対する負い目も、最後はかなぐり捨てて、やっと踏み出してくる「決め」のシーン、現実にはそういう時になりふり構ってられないと思うのに、やっと出てきたその一歩は、ヒロインには人生で最も美しい姿に見えたろうと、ヒロインになった気持ちで読めばそんな気持ち。
ほったらかした方が悪い、それしか言えないけれど、この話は、そこにつけ入る悪意はない誠実男の純愛物語の成就である。
ヒロインが、物語中、彼を美しいと思うシーンがあって、これはもう間違いなく、彼女の気持ちは始まってると読み手は確信させられるが、ここから「伝える」「応える」のプロセスにはサスペンスが混じり飽きさせない。そのハラハラも手伝って、婚約者(ノンビリ屋はクリスピン、お前だ、という感じ)の混ぜっ返しもほどよく物語がスパイシーに味付けられ、物語の展開速度はトップギアに。最後走り抜けて落ち着く。
HQは(元)船乗り上がりも多いなぁ。
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