放蕩の限りでスキャンダルまみれとなって、マスコミから逃れたのではなく、根も葉もない記事によりゴシップの標的にされ、姿を隠さざるを得なかったヒロイン。それまでのファッション業界でのキャリアも捨ててひっそり生きてきた。
麻生先生の絵は、お金持
ちとか華やかな世界とかがよく似合う。そして子供っぽさがないのがいい。登場人物の外見に描き分けがあって、背景絵は描かれる対象らしさを見せて、手抜きを感じない。
名前を変え、野暮ったい服で覆い、彼も最初はオールドミスと。彼の正直な言葉がストーリーの滑り出しを自然なものにする。そして、惹かれていく二人。こういう展開は好きだ。何か隠してる、避けてる、それは解るけれど、彼はヒロインにそこまで嘘をつかれたとは思っていなかった。
町の有名な一族が、鼻持ちならない人間がいないのもいい感じ。
避けても遠ざけても好きなので近づいてしまう。そういうとこもよい。
そもそも、相手がどういうバックグラウンドかわからなくても、目の前にいるその人だけを見て好きになる、こういう設定が私は大好きだ。
私は貴方よりお金持ちだから、財産目当てなんかじゃないわ、とヒロインが言うのも胸のすくところがある。
お兄さんの頑張りはお話では重要な鍵ではないが、潔白をちゃんと晴らしての結末、というのも、読後感スッキリ。
彼の気付きの過程がめちゃくちゃいい。窓の下からの告白も素晴らしい。彼はそんなキャラを映してか、麻生男子にしてはネッチリしてない。嫌みも言わずストレートに翻弄される。
ヒロインは嘘ばかりつく羽目になってしまっている自分を気に入ってくれた彼に、愛し合ったのも嘘だったと嘘をつく。ここがこの邦題を、二重の意味合いを持たせて巧み。
愛は嘘じゃなかった。ヒロインの唯一の真実。
また、真実の自分で彼を愛したかった、という、ヒロインの心を感じとる彼の、嘘を自力で見抜くことが素晴らしい。
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