塀をよじ登るほどの人間はやはりドラゴンの妻足り得る強い意思の持ち主、貴方を絶対に死なせないと気丈に動く。そして優しさも持っている。殺されるか、殺すか、そのどちらかしかないとき、彼女は戦うしかなかった。綺麗事では生きていけない時代の過酷な現実
。
修道院に幽閉したルーウェリンは、ひどい人間であるが、己の目的達成のために手段を選ばぬ所は、イアンとて描写こそ無くてもこれまで有ったかもしれない。許せない、そう思いながら、ルーウェリンと冷静に口をきくリリーの大人ぶりが、敵味方の情勢が揺れる時代に賢明なサバイバル精神を感じさせて、ドラゴンの名を戴く妻にふさわしい。
水浴シーン、もう少し甘さを出しても良かったような気がする。
スウェンが味方なのか敵なのか、という曖昧な描きかたは、このシリーズのほかの作品での登場人物のなかにも、ニコラスだったりで既視感。
当時の女性の髪を覆うテントのような被り物に、時代性を感じる。
牧先生の絵は気品があって可愛さもあるのだが、その分猛々しさは割りを食う。
ただ、イアン、という人物像は外見に男らしさも出ていて、一方で物腰の軟らかさだとかを備えて、魅力十分。
だれず最後まで、自由と平和を当たり前としている私たちに、戦いの傍らに咲いた愛を守ろうとする人々の、自分達流の守り方を見せてくれた。
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