本当のことを知らないと人は表面しか解らないから、悪い人の家柄が良ければその社会的地位に目がくらみ本質を見抜く事が困難になる。
逆に、ヒロインのケースでは、現象のショッキングさに関心が行って、奥に潜むヒロインの家族愛が理解されなかった。
HQ得意の、ヒロインに非がないのに彼から悪しざまに言われる設定だが、このストーリー周辺の人間たち誰一人として、ヒロインの負ったことが何だったかを知らない。悪者としか見ていない。
この環境は辛いだろう。しかし、勇気をもって冷たい目を覚悟で帰ってきた。ヒロインに非はなかったのだからそれでいいはずなのに周囲の態度に、知らないということの残酷ぶりがくっきり。
彼の態度は、悪口雑言を浴びせる数あるHQヒロインのお相手のなかでもひときわひどい。
この類の話は誤解して傷つけてしまってゴメンという、浴びせた言葉やぶつけた態度のひどかった人間総懺悔のシーンがほんとは欲しいのだが、えてしてヒロインは充分名誉回復されずじまい。この話も幸せになれるんだからいいでしょ、とでも言いたいのか言いっぱなしの人たち、邪険にした人たち、妹を除き反省の場面など用意してない。恋愛成就と怨恨の解消は相殺項目じゃないのに。
でも、主題は、相手のことをどんなに嫌な人間だと思っても魅力を感じてしまうどうしようもない感情の存在だ。仮面の奥を見れれば解ったこと。それは、仮面舞踏会の二人の本心に限らない。人は仮面を被っている。
身近でも悪い人のことが知れ渡ることなく誉められてたりなどの現象は珍しいことではない。
このストーリー、真実を当人が口にするまで周囲が、なかでも彼が、知ることがずっとなかったという妙にリアルな側面を持つ。普通は、言っても真の姿なんて誰にもわかってはもらえない。仮面の奥にあるものは、本人が仮面をはずすか、確かめに仮面の奥を見る行動をとらない限り、わからない。
仮面舞踏会の仮面は、このストーリーの組立の丁度メタファーとしての存在だが、これを使ってあの夜をやり直すというなら、7年の歳月の間ヒロインには生きる励みとしてた仮面の彼との思い出を暗転の悲しみに遭らせたショックを、再び幸せなものとして上書きする埋め合わせ描写が見たかった気がする。
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