いくらイヤでも、思いつきがすごすぎる。そして、実行に移される、というほんとにあったらどうなるだろうとのストーリーへの好奇心を優先したような展開。ヒロインのピンチに対して運命の女神が微笑み続けてくれた。
ヒロインが言い放ってしまった、戦争で
戦って来た人を巡る皮相的な言葉は、目の前の人がまさか戦場から帰ってきたとはつゆ知らなかったにせよ、安易だった。
しかし、そこで彼が返す言葉で状況を悟る素直さ柔軟さが、ヒロインの最大の良いところであって、ストーリー進行と共に、多面的な考えに広がり出し、短期間に見違えるほど成長しており、そしてそのままそれが彼の正体を知ったときの冷静な振り返りにと繋がる。
想い出の小屋は、最終的には本当の新居ではないと思うのだが、ついに猟番の小屋しか出なかったなと思う(勿論お話には必要性が無いことだから、まさしく、 無くてもいいものなのだが、単純な覗き見趣味から、彼の本当の家は別にあるんでしょうから、せめてあとがきででも、ヴィジュアル化して見せてくれないかしら、と期待してしまった)。
ヒロインの結婚観は心底同情が行くが、行動力と、現実に動ける範囲の狭さとにギャップがあるのが、もっと気の毒だし、なんだか悲しい。
そして、彼がヒロインの痛々しい跡を見てその結婚観に夢が持てない彼女の事情を思いやるシーンが、これまでのヒロインの無謀とも言える行動の裏付けとなるのが辛かった。
いろいろなことを、相手や周りの事を、よく思い巡らせるようになったヒロインの変化が、ストーリーを引き締めている。そして、見初めてくれた人を忘れたのがヒドイ、みたいに彼は感じたか知れないが、そんなことは年頃の女の子には比較的あることだと思うし、むしろ、嫌いでなかったのが不幸中の幸いだ。
母親も兄も、ヒロインを庇えてこなかったことへの苛立ちが、読み手の私に残った。
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