愛の無い結婚と互いに分かっていての婚約。
古今東西婚約の身でありながら他の人を好きになってしまう話は山程有って、私の大好きな古い映画「或る夜の出来事」、「めぐり逢い」、いずれもそのパターン。契約の破棄なので本当は軽い訳ではないが、結婚式で
迎えに来る略奪婚パターンなどまでも少なくない位であるし。
相手の許しがなければ、被害者(?)のある話で、こういうのは愛し合っているほうの二人が、「勝てば官軍」を地で行くストーリー。結婚までは良くて、結婚以降は不義という区切りも勝手な区切りと個人的には感じているがー。
この話はそこを、婚約してるのだからイケナイ事として扱う、謂わば形式的な認識としては正しくあろうとするも、気持ちに勝てない、出逢ってしまった二人のお話。王国で王室に嫁ぐことから来る制約も話に付けてあるから、背徳感は出せる設定。
国民の結婚観、王族への視線、ヒロイン実家の状況、王位継承、どれも不思議設定とはいえないが、いくら王国物がはなからおとぎ話設定でもねぇ、という、なんとなくのしっくりと来ない居心地悪い展開で、説得され切れなかった読者がここに一人。
個々のエピソードが納得の結末まで私を連れて行ってくれない。
そもそも海ガメの産卵てそんな短時間だったか?、早い夜のことでもないよね、だなんて余計なことまで頭をよぎる始末。
かつて、海亀の産卵を見てみたいから小笠原に行きたい、と言って、変わってるねと人に言われて傷ついた経験のある私は、目の前でその見たかった場を共有できるヒロインと彼の描写には、HQで他にお目にかかれることは無さそうな分だけ、もう少し生命を感じるシーンを味わいたかった。
産卵は小さな一エピソードに過ぎないが、ヒロインのやりたいデザイナーにしても、ゴシップも墓参りも、話の進行上唐突感なく挿入されながら、絵で見せつけられた感のほうは少し物足りない。
多分、もっとっと沢山描いて、 効果的に視覚に訴える力を持てば、この私の感じているリアリティ不足は解消されるだろう。
病の床のプリンスについてだって、悪くないシーンとなっているのにどこか、何か、もうちょっと眼でドラマを目撃したかった気がするのだ。
二人の「背徳」感の原点なのだから。
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