表題作、1話と2話はページ数も少なく前哨戦といったところです。
このお話は3話がすごく良い!
第三者視点のト書きが多用されていますが、とても完結でスマートに語っています。ちょっと文学的でもあります。
3話は少々難しいテーマなのですが、
このト書きのお陰で理解しやすくなっています。
主人公の小津は30まで童貞を拗らせています。不器用で恋愛とセック スを分けて考えられない人です。
対して友人の蘭はゲイ。そもそもセック スの定義など考えない人です。なのでヤれる時にはヤるタイプです。
これは鴎外のヰタの金井と古賀の性質を踏襲しています。
そしてテーマである「性欲の発露」の変遷を2人を通して描いています。これも鴎外が書いたことから導かれています。
小津と蘭のようなキャラはBLのみならずあらゆる恋愛ものに登場します。
しかし性欲が恋愛と結びつくか否か自体を、ここまで対比させ明確に描いた作品は稀だと思います。
合理主義者であるはずの蘭が、結局は小津に恋をして悟性を奪われてしまう結末にはとても心を揺さぶられました。
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同時収録は短編が2つです。
2つともDK同士の恋で、甘酸っぱいキュンを堪能できるお話でした。
3つのお話どれもが、これから!というところで終わっているのがいかにもカシオ先生らしいと思いました。
ヒキを上手く使い情緒を増して終われる作家様は、ひいてはお話作りが上手い作家様だと思います。
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余談ですが恋愛モノの性欲の定義を、100年以上前に初めて書いて発表した鴎外は時代の最先端だったなぁと改めて思いました。
この作品があったから彼が当時の男性の多くがそうであったように、女性を人として扱わなかったことをちょっと棚上げしそうになります。
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