折しも札幌本拠地のプロ野球チーム新監督誕生の就任会見が開かれたばかりである(11/4)。面白可笑しい独壇場、まさしく新劇場のこけら落しの如く、であった。ダルビッシュ投手、大谷翔平選手、今年引退のハンカチ王子と、人材登用に独自の選球眼を持つ実
在の球団も、メイプル球団ほどではない。本作品は女子プロのリーグの話ではない。女子に余りスポーツをさせない国もある。競技人口多かったとしても現実は、別途女子だけの場が用意されてる。30年前、どうしてアーティスティックスイミング(当時の呼称シンクロナイズドスイミング)に男子が無いの?、と言うと笑われたが、もう出来てる。囲碁将棋の世界は開かれた。
しかし運動能力で男女に違いはあるからオリンピック・パラリンピックは、二性に大別している。二つに分けきれない現実を割り切って。
スイート・メイプルス球団は、女子(及び心は女子)のみの球団であり、セ・パ両リーグを抱える日本のプロ野球に加わった、1991年創設92年セントラル・リーグ加盟の新しい存在。川原節が効きまくって面白いペナントレースだった。1991〜1995年作品。
「甲子園の空に笑え!」が高校野球、その中で火花散らした広岡監督とライバル校(?)の高柳監督が、本作ではプロ野球、活躍の舞台がアマからプロに移される。広岡監督が高柳氏をコーチに招いて。
メンバーが高校生ではない、というだけあって、選手達の抱える事情も、青春物には出ない要素が絡み合う。
物語のその横軸みたいな人間関係と、ペナントレースの縦軸の白熱ぶり(?)が「戦記」の名にふさわしい。
笑って楽しんだ。その奥にキュッと制作当時の世相の中の男女観、また当時の男性の女性観が見えて、よくもここ迄(現在2021年11月)来たもんだと、性に関する意識変化にしみじみ。
同時収録「ヴァンデミエール葡萄月の反動」は1993年9月、94年3月、4月発表作品。27歳男性が9歳に退行してしまう記憶喪失物。沢登蕗子の日々が、彼女自身前向きなのだが実情に思いを馳せてしまって、ちょっと胸が苦しい。(救われます。あの後で拒みさえしなければ。)
エンディングもうまい。切り取り方が洒脱。
ドラマというものを知っている先生だから、とことことことこ話を転がし、最後まで味あわせてくれる。
力の抜けた、いい意味でのリラックスムードが相変わらず貫かれて、読み終わるとなんとも言えない、自分の心の静かな充足感に驚かされてしまう。
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