国の運営が掛かる中で、止めることの出来ない感情が芽生えてしまい、成就はおろか、扱いかねる不穏材料として自分の感情に素直に動くことが許されていない王女。
執事である彼も、ストレートにぶつかるヒロインの手前、もはや隠せなくなる感情。
いいの
だけれど、あっさり、という感覚だった。
それにしても茶坊主か怪僧のようなシンクレア、それでいてハンサムとは、凄い人物設定だ。
阿片とくれば、英国による香港陥落の流れを普通に思い起こさせるが、本作は阿片と英国の植民地政策の謀略とは切り離していて、その時代背景からして、近代化の遅れた国と英国との関連を描いておきながら無理感があり、原作製作時点の政治的方向修正の可能性の疑念を却って消せない。
その阿片と英国との関連遮断はさておき、支配階級あるあるの使用人へのパワハラセクハラが、階級への嫌悪を超過して、爵位を得ることが目的とする行動へと駆り立てた経緯として表されるのであるなら、彼へ読者としてもう少しその動機への同情を高めるもうひと押し迫が欲しかったように思う。
また、彼の行動が最後は彼の私情を引き金とするとのであるために、クライマックスで王女に語る時にそっちメインだが、やってる事はされた側からすれば国家転覆の大罪、軽んじられた気がするのはロマンスとしては成り立っても、私の正義感は収まりが悪かった。
そこで、ある種バチが当たる、となるわげだが、そこも最終頁のご都合主義の匂いで暗さを抑え、結局、次々英国の侵略を許すことになったしまった中東の運命のリアルより、恋の成就でめでたしめでたしで締めくくる恋愛ドラマなんだもの、という感じ。もっとも、続々港湾等を乗っ取ることは今も平然と行われており、前近代の手法でもなんでもない。このストーリーが、現代でもされている諸国の人が読んだら、または、している側(その方が確率は高くなるが)の国の人々が読んでどう思うのか、とは思う。
尾形先生の描かれる執事、暑い国で19世紀であの服は大変と思うが、おかしくない所に説得力あり。
でも私は、市井に馬で出るシーンが一番好き。
79頁橋本先生がひどコマ参加、シリーズを共同執筆というので、担当部分のキャラ登場シーンと思われる。一貫性に笑った。
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