シンデレラストーリーは王子様と幸せになりましためでたしめでたし、ではなかった。そこに愛はあるのに。王子もシンデレラも両方がそれぞれの個としての自立を求めれば摩擦は起こる。一朝一夕にして価値観は変えられず、苦悩は続く。アズリンが作中で言ってい
ました。「5年間継承を忘れ一般的な夫婦(普通の夫婦)となれたと思い込んでいた。楽しかった」と。でもそれは、自らの立場を棚に上げて逃げている行為だった。王位継承が現実となってその身に降りかかってきた時に初めて、それが分かったのだ。けれど、希望という選択を許されずに育ってきたから唯一「甘えて」いたわけだ。キアラにしてみれば5年間も一般的な共働き夫婦お金持ちバージョンみたいな生活を続けてきたら、このままがずっと続くと勘違いして当然。頭の片隅にはいずれ・・・という思いはあってもずっと先の事と軽んじていただろう。しかし、その時はきた。王の責務に追われ手一杯なアズリン。習わしに従ってキアラは王妃教育の日々に当然すれ違い苦悩は2人を引き裂く。展開は上々、そうなるだろうとの予測を裏切ることなく続いていく。しかしアズリンは、父王を亡くしたことを悲嘆し泣き崩れ落ちる王妃(母親)を見て驚愕する。信じていた価値観の一端が崩れた瞬間だった。キアラを母の二の舞にならぬよう別れを決断するが、キアラはそれを認めず復縁となる。結果キアラは国政に係わることになる事が良いかどうかは別の問題だが、アズリン王の代で女性の権利等々の価値が変化するのは良い事だ。キアラが進退を考えている時に彼女の母親がいちいち口をはさんでいる事も、どの国においても結婚を機に女性の生活や立ち位置を確固たる希望通りにすることは困難だと伝えていて納得する。だからといって、あきらめてはいけないと示している点も付け加えておきたい。総じて、アズリンのキアラに対する愛情がそこここに散りばめられていてトキメキ多い物語だった。
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