ヒコ先生の作品は、確実に自分の涙腺のツボを突いてくる。500年の営みが私にとってはその最たる作品。この作品もセール待ちしてて半額になったタイミングで買えました。レビュー見てると評価が分かれていますが、私はやっぱり泣かされました☆ネタばれにな
るので未読の方は回れ右していただければ。
本作では悲惨な生立ちから人を利用して生きてきた原田が、始が過去に原田を犯した男に制裁を加えた当たりから損得抜きで立ち回る始に惹かれていくものの、始は親父が100、その他0の人。原田がいくら始への想いを募らせても自分を見てくれそうにない中、四代目から三代目を亡き者としてその罪を柳瀬組組長に被らせる構図を描いたのに乗って(そういう流れだと悟ったかして)、始だけは生き残らせる約束を取り付けたのは、始から頭の存在を奪う執着心からだったのでは。でも、原田もその筋書きどおり事が進んでも、若頭の始が原田に報復するであろうことは分かっていたはず。ところが思わぬ経緯で始が記憶喪失になっていて、原田はヤクザの肩書の取れた始に、事実と違う筋書きを話し、始を匿い、2人だけ時々スカイの世界の中で、始を大切にして生活するうちに、原田の気持ちが始に伝わり、本来ならあり得なかった感情が2人の間に流れて始も原田に愛情を向けるようになった。それは、始が記憶喪失記憶にならなければ有り得なかった、奇跡的なこと。そう思って二度読みすると、凄い泣けてくるのです...。
本当に前半と後半とで何が真実なのか、始と共に読み手も混乱しますが、全部読み終わったとき、原田はこの設定だから始に自分の気持ちを理解してもらえ、幸せな時を過ごせたし、始も報復を踏み止まり、原田に対してすげなく接しているものの突き放す訳ではなく、いつしかまた歩み寄るときが来るのではないかと思わせるエンディングを迎えられて、良かったね、と思えるのです。
原田がヤクザの肩書を取り払わないのは、始以外の他人との関わり方は変わらない奴なので、才覚を活かせる世界が他になかったからか。始だけに向ける純愛と執着が堪らないです。ヒコ先生の作品が好きな人なら琴線に触れる部分のある作品だと思います。涙腺刺激度☆4.5です!
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