私のせいでアンドレアスを傷つけ社会的にも貶めてしまったのに半年間も探してくれていた。それがどんな形の想いでも再会が嬉しい、そんなシエーナの想いがとてもよく伝わってくる冒頭です。もっと自分が利口だったなら、勇気があったなら、過去を悔やむシエー
ナの想いが切々と描かれ涙が溢れてきます。「良家」というのは行儀作法や勉学において厳しく教育されます。それは「体罰」を伴うことがあるのです。「伝統」の有る「家」では「当たり前」の世界なのです。しかしそこに育つ子供には地獄ともいえます。たとえそれらが身についたとしても心が正しく育つとは必ずしも言えません。それは「体罰」という名の暴力のせいで。一般的な子供が夢をえがく時間を 体罰に恐れ耐える時間に充てられてしまうのだから。擁護はしませんがそれがシエーナの父なのだろうと想像します、素質もあったのでしょうけど。耐えられずにそうとうに歪んでしまった。植え付けられたであろう「帝王学」という名の拝金主義、名誉欲、抑え込まれた恨み辛みを晴らす為に子供を、自分以外の全てを道具にしたのです。全欲求を満たす為に。その為に犠牲になった姉妹の身の上はむごすぎる。想像するだけで身を切られるほどに痛い。辛すぎます。自分を変えなければ全てを変えられないと思い詰め努力するシエーナが痛々しすぎるのです。全てが悲しい。それにしても作中に毒を含んだセリフのなんと多い事か。どん底へと導いていく感が溢れています。苦渋の想いで真実を語らねばならないシエーナの心中は如何ばかりか…ようやく全てを吐露してアンドレアスに謝罪することが出来た展開には心から安堵を感じました。しかし、しかし、しかし、ここが最大のHQ展開の見せ場であるP121のシエーナの告白「好きよ」と答えるシーンはいただけません。葛藤が永いだけにこの告白は 身体の奥底から絞り出すような叫びにも似たものであるはずなのに、そうであって欲しかったのに、アッサリ「1コマ」のみ???せめて片ページ、希望は見開きで、これは興ざめです。違う意味で泣ける。内容が重く暗いものだけに、もっともっと大きな光を放って欲しかった(泣)残念至極。心残りの有るエンディングでした。HQなのに…。
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