一時期、将棋は大衆を魅了していた娯楽だった。一つの盤を囲んで、先手と後手が相対し、その回りでは数人の野次馬が観戦しつつ、野次っていたものである。また将棋にはいろいろな遊びがあり、詰め将棋、はさみ将棋、などにも人気があったのを覚えている。しか
し、何と言っても、本将棋といわれたものであった。奥が深く、極めるためには、その個人が持っているあらゆる、かつ最高の力量が必要であった。だから素人で中途半端な知識と読みではできないと知りつつも、やはり強くなりたいとして、いわゆる名人や有段者達の指し手を見て勉強したものである。本書は、氷室将介という若者の将棋名人を目指す険しい道のりが語られている。どんなことでも、どのような場合でも、人は「読み」というものを重要視し、先を予測しようとしている。その時、例えるのが将棋の駒だが、人は駒のように動かないこともをも知っている。しかしそれでも駒に例えるのは何故か。人生すべからく「読み比べ」だからだ。
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