はっきりしない記憶のなかで、この男性は果たして本当に味方と言えるのだろうか、という不安があり、一方で信じられるところも今の自分にはその男性の中に薄明かりのように見えている。
ヒロインは事故に遭ったのだが、それがサスペンス?みたいな不可
解さ。
彼には冷淡な対応もあるため、ヒロインが彼に対して抱くほどの好意に、私は入り込んで行けなかった。
ここで、男性がすごく素敵だと思える魅力をもう少し描写してくれないと、まず、まだ真意を探る気持ちが先に立ち、小出しの言葉を信じきれない気持ち、自分の気持ちまで曖昧になりそうな身の上の宙ぶらりんさ、いろいろな不確実要素でのめりこめない。
自分なら、まだまだこの物語の経過では警戒と慎重さが残るだろう。もう少し乗り越える時間を要すると思う。
彼のほうは、ヒロインへの興味は隠さないものの、他のところは自分を出さな過ぎて、これまた、私には少々気難しささえ感じた。
すべて明らかになるのも、お友だちと連絡がつながった後半あっという間のこと。構成上、種明かしを最後に持ってくるため、読んでるこちらが、そうだったの!という盛り上がりが難しかった。
そういえばあのとき、みたいな合点がいかないため、回想語るときにもっと絵として後付けで見せて欲しかった気がする。
記憶の霧のなかで出会う素敵なロマンスにしては、ヒロインの居心地の悪さが終始あって、のめり込みに必要な熱気も奪った感じがしてしまう。
赤ちゃんのサイズ感が、頭の大きさとか、男性の腕の中でピンと来ない。
試す意図があったにせよ、コルドバ家で堅く伏せられていた真実が、シドニーの友人と接触できた途端堰を切ったように明るみになったのも、ヒロインの身体への負荷を考えてばかりではなかったことなのだと、ヒロインでなくとも愕然とする。
あれこれ秘密主義でヒロインの立ち入りを拒む彼。心を許していない言葉を浴びせながら、まるで一宿一飯の代償のようにヒロインを抱く彼に、読者として私はどこか許せない気持ちも持ってしまう。
いくら、彼が最初から愛していたと告白しても、だったらなぜもっと彼女の中の暗闇に居る不安や恐怖に心のケアをしてやれなかったものか、とも思う。
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