3作からなる短編集は主人公の一人が刑事で同じ世界観で描かれている。短編集だから登場人物たちの過去や背景、事情などが省かれていて唐突に感じる場面や心情が分かりにくいところがあるのが読んでいて辛い。
表題作の『愛のびんぞこ』はある事件
で目を痛め、刑事を辞めた榎津と元相棒・日島の物語。退職して便利屋のような探偵をしている榎津と現役刑事の日島は同居しているけれど、榎津が刑事を辞める原因となった事件が完全解決には至っておらず、それが榎津と日島の仲を不安定にし、日島のぐるぐるモダモダが少し鬱陶しい。
前後編と短いため、偶然の連鎖で事件が解決してしまうのが勿体ない。
『ラブユー・キャッチミー』は表題作にも登場した櫻井刑事が主人公。時間軸が過去からスタートし、こちらは1話のみだから祐陽のバックグラウンドが全く見えず、読後はかなりモヤモヤ。
『鳥を恋うサカナ』は日島と櫻井の同僚である度島が主人公。日島と櫻井が真っ当な刑事だったのに対し、度島はどこか力の抜けたいい加減な感じのする刑事。釣りをしているときに出会った尚樹に今まで感じたことのない執着を感じ、そこに事件捜査が絡んできて……という物語。
度島はともかく、尚樹がどういった人物なのか、最後まで読みきれなかった。
『ラブユー……』の祐陽も『鳥を……』の尚樹も短編ゆえの省略が激しく、物足りなさが残る作品だった。
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