芥川賞作家の奥泉氏とせいこうさんによる日本文学をお互いの視点から語り、ボケ、ツッコミありの非常に読みやすい日本文学論です。
谷崎潤一郎の春琴抄を読み解こうとしたときにこの文芸漫談に出会いました。漫画でもレビュアーさんの熱い語りに惹かれる
ことがあるように、2人の小説家がいかに谷崎の春琴抄が素晴らしいかを熱く語り合うスタイルと、読みやすいのにその内容の深さに感嘆し、一層春琴抄に惹かれる要因になりました。テクストフェチのせいこうさんが好きなテクストを語るときのねちっこさ、三島由紀夫と島崎の対比、そこで幸せの黄色いハンカチ出てくるんかい、と思わせてからの変調、また春琴抄の多重構造の構成が、プロの小説家から見てもいかに優れており、どの点で通俗小説から日本文学作品に転換するのか、などといった自分では気付かない視点などなど、視界がパァーっと開けるように小説の解像度が上がる素晴らしさ。そして、本編ではさりげなく書いてある一行がいかにエロいのかを語るときの語り口の熱さ(笑)。エロは人間の根本的欲求だからか、よくその一行をそこまで分解すんな、と思うほど言語化してくれて、いや、ホント、谷崎エロッ…ってテンション上がりました!
本編を青空文庫で0円で購入して、こちらもセットで購入すると、とてもリーズナブルに日本文学、面白い!と思えるようになると思います。小説好きなら読む価値ありのおススメ作品です。
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