本書はタイトルのとおり『隠れたる事実 明治裏面史』の続編です。
正編はじつは明治10年の西南戦争まで、ほんとうに明治初期のことしか述べられていません。当時の読者はさぞもどかしい思いに駆られたことでしょう。著者も同じだったとみえて、出版社の懇請に応じて世に出たのが本書なのです。
「序文に代えて」に曰く、
「明治裏面史を書いて、世に公けにしたのは、数前年の事であるが、存外に好評を博して、数十版を重ねたのは、私の光栄とするところである。/名は、明治裏面史と称しても、明治年間における、いっさいの事件を、この少冊子に悉す事は、もとより不能であるのみならず、私の寡聞浅学は、その任でない。しかしながら、その一端にだけは触れて居る、という自信はもっている。/明治九年までをかぎって、一冊に纏めたのであるから、その後の三十六年間を、無視しておる事はできぬ。したがって、続篇の起稿は、その当時から私の義務として、心にかけておったところである」
語られるのは西郷隆盛の挙兵から自由民権運動、日清・日露戦争の勝利。終わりはポーツマス条約に調印した小村寿太郎全権が横浜に帰港する場面です。あわせて明治の世を騒がせた数々の疑獄事件が扱われます。痴遊の「解説」からは当時の人びとが伸びゆく自国の政治と世相をどのように認識していたかが浮かび上がってきます……なんて理屈は抜きにしましょう。どうかこの名調子を心ゆくまでお楽しみください。