――お兄さまの命は、私の命であがなう。
倒れ伏した雪生の前で、メイベルは、魔剣
を逆手に持ち直した。
これが私にとって最後の魔法。
二百年生きた。白雪姫の転生体を捜して、
ヨーロッパ中をさまよった。
そして、この地でお兄さまと出逢った。
二百年生きて、初めて恋をして、初めてを
捧げて、短いけれど愉しい日々だった。
もう充分だ。
――私は幸せだ。
――充分、生きた。
白雪姫に裏切られた王妃も満足しただろう。
あなたから生まれた小さな小さな魔女は、
人に愛され、幸せになれたのだから。
目を閉じ、メイベルは自ら胸を突いた。
「ありがとう、お兄さま」