少女漫画にしても、近頃読み漁ってたハーレクインコミックスにしても、親の再婚による義理の兄妹(姉弟)物は実に多い。望月先生は、やはり少女漫画のもうひとつ根強い人気領域の教師と生徒との恋愛物を手掛けておられる。つまり二大ジャンルを、本巻と「スイ
ッチ」とで描いておられる。
だが、こんなにも、他の先生方の数ある典型的な学園もの家庭ものとは異なっている、というところが、凄さだろうと思う。地味なのに印象を残すのだ。ただ美麗なイラストを見ているわけではなくて、誰がどこでいつどうしたというお話だけ顛末を追いかけて見届けるのではなくて、漫画というストーリーと省きの究極形のようなコマの構成で、総合力を持つ。間とか空白とか黒とか、ごくたまにある心理的背景を表すかのトーンとか、実にその効果が、押し付けがましくない演出となってこちらの心に引っ掛かっていく。ジリジリとキャラの心境を追い込み、関係の危うさにドラマを(読み手に)「感じ」させる。その道険しの難しいバランスのなかに、登場人物たちは結構相手をちゃんと信頼しているのだ。
後半の作品は、もっと当方は主人公を危うく思う。そんな正体不明の男性を信じていいのか。読み手の私の方が忠告したくなる位に無防備過ぎる主人公が、ずっと姉を信じていた、ということのよすがを揺るがす方が大きい話。
しかし、最も言いたかったのは頼ってみるいうことのほう。究極、彼女は、その胡散臭い男を信じるしかない状況で結果として(あくまで結果論だが)頼ってみて、事態は大きく展開した。
見たくなかった姉の意外な一面も、あくまで親視点からの姉の好きな人への評価も、全て、自分の生活圏から出てみることで、脱皮を果たした。
初めて自分の生活圏外へ出掛けてみることで得られる成長(映画「スタンド・バイ・ミー」の少年達みたいに)が、テーマ的には普遍の主人公の成長ものながら、望月先生のつかませ方に驚かされる。また、姉への憧れを乗り越え、姉の等身大の姿が見え始める主人公が、それを受け入れ始める成長(!?)にも。現実と折り合い始める変化というのか。
なんとも中途半端な年齢を扱い、だからこそそれだけできめ細かいストーリーが仕上がる。
年を取ったら描けないところを、先生はよく表せるなぁと、先生の作品を読むたび、その描いているもののインパクトを思い知ることになる。
なかなかこういう味を出せる人は少ないのだ。
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