平たく言ってしまえば一途に想いを寄せてくれるイケメンに翻弄される主人公という少女漫画にもなりやすい構図です。
相手が同性というだけでこうも複雑になってしまうのか…と思いますが、同性であることは正直この作品においてはそれほど軽蔑もされず、か
と言ってオープンに曝け出すわけでもない。理解されにくいけど、そういう人っているよねという、なんなら今時な作品なのかもしれません。
なんと言っても子供の頃の背景や表情、仕草などで意味深なカットがあったりするところを2回目3回目と読み進めるととても味わい深い作品だと思います。
渉や佐伯くんの周りの人たちも古矢さん作品特有の適度な距離感を保っているモブになり過ぎない人たち。ただし言いたいところや読者が悶々としてる時に一矢報いるような言葉回しも上手いです。何度言ったれ!と思ったことか…
青春の甘酸っぱい思い出を「くっ…!!!」と噛み締めながら布団の中で読み進められたのはいい思い出です。
渉はとにかくいいやつだし、最終的に絆されたと言っては聞こえは悪いかもしれませんが、あそこまで佐伯くんによく絆されなかったなあと忍耐強さを感じます。友達にも恵まれているようなので男らしさや、優しさ、人から好かれる性格が魅力的で佐伯くんに負けず劣らずめちゃめちゃ好きです。
佐伯くんは過去の確執や、渉への執着に最初は疑問も感じましたが読み返して「そりゃ、渉じゃなきゃダメだよなあ…」と額に手を当て、はよくっつけと心の底から思いました。良くも悪くも大人で、わがままになりきれないのに渉にはどこか気を許している感じが、ねぇ…たまらんのですよ。
2人の関係性を緩やかな空気感で少しずつ少しずつ心境や現状の変化に合わせて変わっていきます。
時間の流れはゆっくりめ、堀田きいちさんの『君と僕』を彷彿とさせる瞬間があるように感じました。
BL作品に何を求めているかは人それぞれだと思いますが、心情描写の上手い人の作品は私のこれからの人格形成の一部になってくれるような気がして、良本に当たった時の感動が大きいです。
何度読み返したかももう覚えていないですが、他の作家さんにないいいところがたくさんあります。長編を読みたい気持ちもありますが、作者さんの筆が乗るまま、新しい作品を気長に待ちたいと思います。
星、レビューはあってます。なんならもっと評価されていい作品。みんなに届け、君は夏のなか。
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