崩壊してるかの家族関係がぎりぎりのところで踏ん張ろうと。。。冷ややかなようでいて身体の中には人の血が流れているな、と登場人物達に思う。それでも、立場や事情を利用しているようなところを、如何にも狡さよりも、そこまで悪巧みなどないのだという様子
に仕立てて。
もともとくらもち先生の描く男子はミステリアスなところが多いと思うが、本作品の主人公のお兄様は、ミステリアスを越えて冷たい感じを強調、主人公の必死さが空振りになりそうなヒヤヒヤも抱えて読み進める。
「ふつう」というタイトルにある言葉が、彼女のまわりの普通じゃなさぶりに皮肉なくらい効いてくるが、確かに、周りのキャラを見渡す限り、千花ちゃんが「ふつう」の真ん中には居る、と感じた。
シマさん、この人にも時折ストーリーを回してもらっていたが、クセのある設定がこれまたこの家の中のうさん臭さを盛り上げる。
白菊サンが、主人公が新生活を始めるまでに築いていたこれまでの彼女の支えとなっている、といおうか、今を肯定したい主人公にとっての、胸を張ってほこる感情の受け止め先、といおうか。
さすが、と思える表現上の工夫が相変わらず。気まずい空気とか、他人の無理解に困惑するさまとか。
そして、漫画ならではの見せ方がやっぱりいい。全てを描かず、それでいながらこう描くのか、というところ。そして、もともと非凡なコマの切取られ方が、本作品ではより実験的で、もともとおしゃれな絵だったり面白い影や黒の着色が付けられていたり、凝ったカメラワークだったりと工夫が詰まっている絵から、泥臭さがもっと意識的に排除されているかのよう。
彼らは庶民ではないが、苦も無く生きているわけもなく、穏やかな日常は獲得されたものだったのだ、という感じだ。
実はよりキュートさを求めていた私には、この話が発している危なっかしさ、完璧な人間など居ないと私もわかっていても、登場人物全員が安定感を持たされぬ作者の意思を感じるところに、少々自分自身が振り回された感がある。ストーリーのほうは4.5をやや下回る気持ち、一方、挑戦的な漫画表現という印象が5超の気持ち。故に、5星にした。
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