5股しているエリートサラリーマンとそれを全て受け入れて付き合ってくれる年下の完璧な恋人同士が織りなす恋のお話。
受けの須賀が5股しているクズ男ですが、見た目はイケオジ、物腰は柔らかく温厚で優しすぎる天然の人たらしです。なぜ5股しているのか
は分からないままお話は進みますが、須賀はそれで心の安定をはかっているように見えました。ただ、それが虎にとっては切なくて苦しい。どんな時も嫉妬を見せず、笑顔で送り出す虎の胸の内を考えると悲しくて涙が出そうでした。
しかし、虎の完璧な恋人としての振舞いにようやく疑問を持った須賀が、虎の涙を見て虎以外の関係を清算することに。そこで起こった傷害事件はまさに現実世界の痴情のもつれでニュースになるもので、そこに存在する登場人物たちの人間臭さがリアルに描かれていると感じました。
番外編まで読んで感じたのは、虎も須賀もとても辛い過去を背負い、傷付いて生きてきたということ。だからといって、須賀が5股をして虎以外の恋人たちを傷付けたことが許される訳ではありませんが、須賀は須賀なりにそれぞれの恋人を大切にしていたと思います。気持ちをもらえていたからこそ、みんな本気になり傷付いたんだと感じました。そして、怪我をしたのがかけがえのない虎だったからこそ須賀はより傷付き、きちんと向き合って生きようと思えた気がしました。
重く苦しいテーマですが、こうして痛みを抱えながら前に進むのも人間らしい生き方だと思いました。そして、そんな中、自分を変えてくれるような人に出会えたことが二人にとって幸せな奇跡だったと思います。人のどす黒い感情をも描ききったとても良い作品です。二人の幸せな姿をもう少し見ていたかったです。
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