さんざん王子物を読んできてなお、この漫画にありきたり感を抱かない。それほどストーリーには破天荒な楽しさが詰まる。まずあり得ない事が次々と、という、そこにリアリティなど一切滅却の超ドラマツルギー的な、でも、冒険心をくすぐられるワクワクなハプニ
ングに、いつでも前向きな存在の主人公が絡み絡まれ。
主人公が危険に遭って、ヒーロー登場して、という安定感も此処にはない。その読者の期待値を軽快に明るく崩す、徹底して先を見せないスピード感にあれよあれよと連れていかれる。あの時代の漫画のコマの見せ方を感じさせもするし、それでいて、やはり未だに唯一無二の忠津陽子先生の世界もたっぷり味わえるのだ。
絵だけでも、ものすごい人気だった先生の、ストーリーの楽しさが此処に溢れ、本作品より先に読んだ「お金ためます!」からも絵の可憐さが増していて、実に良かった。特に王子、ハーレクインのような現代作品でも、ああいう王子を見かけないほどのキャラクター。
1975年作品。主人公も、当時女性に求められた社会からの女性像をスカッと打ち破っていてくれて、爽快感。きっと当時の少女達も、世間からのあらゆる制約を破って動き回る主人公の行動に代理させて、物語世界に遊びに行ったのではないかと思う。
次は実写ドラマ化もされた代表作「美人はいかが?」を読むチャンスを窺いたい。
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