素材も内容もみな文学作品として仕立て上げられるような味わいがある。台詞の表現力、その世界観や歴史的背景の体感的な感覚が、薄っぺらではない。
画力がまた特に素晴らしい。繊細なのに描かれかたに確かなライン、頁頁に柔らかさと温かみのあるタッチ。
親の死による生活困難があって毅然と生きながらも楚楚とした主人公のたたずまい。そこに美しさと貴族階級のパワーとが共にある。主人公が伯爵に影響を与えたものは、ロマンスに軸足をおいている作品の枠を越えている。
作品世界の深さがキープされながらコミカルな描写にも巧さがあり、これ迄に私が読んだHQで最も絵と内容とが一体となって心に迫ってきた。ストーリーは原作あってのものであっても、細部に魂の宿る珠玉の漫画だと思う。
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