単行本の初刊行1970年。電書はレディースコミックの分類となっているが、元は「りぼん」系少女漫画。表題作が130頁、「ダニイル」39頁、第1回りぼん新人漫画賞佳作受賞のデビュー作「マイ・エンゼル」31頁の3作品。マイ・エンゼルの最後のコマに
68年2月と完成時の書き込みが。
これら3編共その当時の漫画の絵っぽい見た目、という感じだが、私が初めて読んだのはマーガレット誌だったので既に作風として、そのとき他の漫画のキャラの主流のようなほっそり体型よりも、多少肉感のある、少しエッチ寄りなムチッとした顔とボディだったように記憶している。
初期作品を今回読んでみて、読み始めのほうはそこまでもりたじゅん先生っぽさを見つけられなかったが、丸みのある横顔の輪郭線に後年に私が見たもりた先生作品らしさを何度か思い出していた。
男性はそこまでかっこよくないし、主人公にもハラハラさせられて、どちらかというと表題作もマイ・エンゼルも、ストーリーのドタバタ感が強い。
此処に「ダニイル」をぶっ込んだ印象強烈。甘さやお伽話を排除して、機械は所詮機械、人造人間かくあるべしとのルールに則って、冷徹にさばかれた。
その容赦の無さが、超えてはならぬ線に対する厳格な考え方を貫いている(貫こうとしている)姿勢の描写。発表から55年が経ち、今や人工知能が人間社会を席巻している中でも、いまだ「創造性」と「多様性」は不変の課題。人間が取り込ませた知見の天文学的な物量の総合体は、定義付けの線を移動させたのかどうか。
ダニイルが守ろうとしたものは主に忠実な立場の表れ、しかしそれは「定め」以上の行動と解釈された、となる。創造主たる作製者の置いた定義からの逸脱は許されない、と。
本作が収録されていることでこの短編は、ピリリと引き締まった。私としては作品「ダニイル」が無かったら3.4の3星どまりといったところを、異色な存在の本作の読後感故に、大体3.7辺りの感覚で4星に引き上げることになった。
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