高校生の頃の話。
俺はよく『君は霊感がある 』と、友達や霊媒師さんから言われて、それをネタに面白がっていた。
そんなある日、夏休みで家でゴロゴロとしていた時、いつの間にか寝てしまったのか夢の中に意識があった。
そこは、石段の途中で上へと続く。
横は手すりがあり、林が生い茂っていて落ち着いた気持ちのいい場所。
何段登ったのだろう。
そろそろ登り終える頃、横をみるとさっきまでの林はなくなり、小さく町が見える。
富士山の半分位の所の景色。
登り終えると、そこには神社らしきものが玉石積の石垣の上に建っていた。
横には展望があり、そこには1人の白い服を着た男性が立っていた。
景色を見ようと男性の近くにつれ声が聞こえて来る。
『 ?っと?こ?いで』
『もっとこ?いで』
『もっとこっちおいで』
あと数歩の所で寒気がした。
自分の中で「これ以上は近寄ってはならない」と感じた。
やばい!とおもい左回りに回って逃げようとすると、昔の着物姿の人が何十人も横並びに立ってこちらをみている。
しかも、中央の扉が少しづつ開いて、なにやら嫌な予感がした。
すると、さきほど何も無かった石垣、ひとつひとつが顔の形へと変わり、苦しそうな顔、泣いてる顔、怒っている顔、騙すような笑顔の顔、たくさんの顔がこちらを見ている。
夢なのになぜか死を覚悟した。
わからない、意味がわからない。
頭の中はただ真っ白になり登ってきた石段にむけて走った。
降りようとした瞬間、風が吹いた。
それは『 死ね』と言わんばかりの風。
「ああ、ここで死ぬんだ」
そう覚悟した時、前から暖かく抱き抱えるような風が吹いた。
その時、自分の部屋へと帰ることが出来た。
閉まってる窓を背に、まるで上から降りてきたやうに床に着地する。
何が起きたのか全く理解出来ない。
後日、そのことを相談すると
『普通なら帰ってこれなかった場所だよ!』
と心配されてしまった。
それからというもの、霊感をネタに遊ばなくなりました。
今でもそこがどこなのか、いた人たちは何者なのかわからない、とても不思議な体験でした。