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漫画(まんが) ・電子書籍のコミックシーモアTOP > 特集一覧 > オカルト恐怖体験2018【発表】
夏に訪(おとな)う人
10年ほど前の話です。
知り合いのアクセサリー雑貨の卸会社で1~2時間だけ夏休みのアルバイトとして店の留守番をして欲しいと頼まれた時のことです。

お店は踏み切りのある十字路の北側、道に面しており1階部分はアクセサリーなど雑貨を売る店舗となっていて、階段を5~6段上がった中2階に事務所と奥にストックルームがあり、階段上部にはハーフカーテンがつるされていて店舗から事務所がよく見えないようにしてありました。
午後2時。
その日はかなり暑く、店の前に道行く人は誰も無く時折通る車と蝉の鳴き声だけが照り返しのアスファルトに響くもの寂しい気配に、少しの不安を感じながら社長とスタッフを見送り、事務所に1人残ったのです。
店舗は全面ガラス扉で手動で引き開けるタイプのため、誰かが開けると事務所に居ても気配で分かるので、あまり店舗の方を気にせず頼まれた値札付けの仕事をしていました。
20~30分経った頃でしょうか。
店の扉を開ける気配は無いのに、クーラーのかかる事務所に生温かい空気がふわりと漂ってきたのです。
誰か入って来たのかしら?
とふと顔を上げて机越し、少し腰を浮かせて店舗の方を覗き込もうと5、6段しかない階段に目をやると、そこにはいつ入って来たのかまだ若い学生らしき青年が這いずるように階段に手をかけ、こちらの方を見ていました。
青年は青白く、眼鏡越しに見える目はどこか虚ろで焦点が定まっておらず、暑さで体調が悪くなったのかと、声をかけようとした途端、青年の身体の下半身が無いことに気づいたのです。
あまりの怖さと驚きに声が出ないでいると、急に背筋に冷たいモノが流れるのを感じ、慌てて振り返っても何もなく、恐る恐るもう一度青年の方へ顔を向けると、そこにはもう誰もいませんでした。
錯覚かと思いつつ席から立ち上がり、青年が居たであろう場所に行くと、そこにはポタポタと階段から雫が伝うほどグッショリと水で濡れていたのです。

その後、私がどうしたのか少しの間の記憶がなく、しばらくして社長とスタッフの1人が戻ってきてようやく時が動き始めたようでした。
社長につい先ほどまでの経緯を話すと、私が多少霊感があるから怖がるといけないと思って言わなかったと言う前置きをして、実は前日の夜、詳しくはその日の夜中に大学生が店の近くにある踏み切りで自殺をしたということ。
そして見つかった死体は下半身が切断された状況だったこと。
その時間、雨が降っていたことを聞かされたのです。

帰り際、社長が花束を買い、スタッフと私と踏み切りに添えて手を合わせました。
それ以降、下半身の無い青年の姿を見たと言う話を聞くことはありません。

ただ、あまりにも強烈すぎる体験は記憶に刻み込まれ、夏の暑い午後、誰も通らない道を蝉の鳴き声が響く中で1人歩くとき、不意に思い出してしまうのです。

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