夫が借金をしている奥さんを、その友人である妻が連れ出して、主人公の初老男が玩ぶ、というストーリーが、和服熟女、閉鎖的な屋敷内、そして季節の花という「藍川女史三点セット」の中で進む。本作では、資金援助のカタに関係を求めた女性をゆっくりゆっくり
男が自分のものにしていく過程を楽しむ嗜好が凝らされている。この緩慢さは作家が多くの作品で登場人物に施させている焦らし作戦を読者に向けたものか、はたまた巨匠団鬼六の影響か。読者諸兄には短気を起こさずじっくり読み進んで頂きたい。それにしても藍川作品の「年増女と高齢男」の組み合わせの多さよ。しかしこの演出によって、熟女の大人の魅力と、自分より一回り二回り年上の男に甘える少女性を一人のヒロインの中に現出させる効果が出ている。同名の短編集のトップを飾るにふさわしく、しっとりとした仕上がりである。
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