著者は言います。ことわざは生き物であり、長い間に様々に変化していく、と。そうした変化の中で最大のものが、ことわざが消えてしまうことです。例えば「おけらの水渡り」ということわざをご存知でしょうか? 昔、子供たちはオケラでよく遊びました。水に入れると泳ぐので競争をさせたのです。ただ、中には途中で泳ぎを止めて浮いたまま休んでしまうものがいます。それが「おけらの水渡り」ということわざのもと。ものごとを途中で止めてしまうことのたとえです。オケラを見かけなくなった現在、このことわざも消滅の危機にありますが、日本の風景に溶け込んだ言葉がなくなるのは寂しいのです――。本書は、こうしたことわざ約二〇〇点を取り上げて、成り立ち、時代背景、文学作品での利用例などの薀蓄を楽しく紹介するものです。