鬼才・楠田文人が描く、どこかおかしくて、ちょっと不思議な世界へようこそ。15分間の現実逃避をお楽しみください。 ウトギ山山頂に程近い、小さな池。ふもとの村人が「蒼池」と呼ぶこの池は、突き出した中乃島に生える一本の白樺が特徴だ。 粉雪が舞う中、一人の男が山道を登ってくる。猟師のタキだ。ウトギ山に鹿が群れをなして行ったと聞き、雪が深くなるこの時期に人はウトギ山に登らないことを幸いに、一人先に鹿を撃ちに向かうことにしたのだ。 吹雪の中、貴重な食料を熊に盗られたと知ったタキは、干し肉をかじりながらじっと鹿を待つ。しかしタキが見つけたのは、抜けるような真っ青な空に浮かぶ白鷺だった…