奈良時代。皇位継承をめぐる権力争いが長年続くなか、藤原家の一族としてこの世に生を享けた少女がいた。時の権力者である父・不比等からは「闇を払う光となれ」と光明子と名づけられ、母からは「この世を鎮め、穏やかならしめるのは女人の力」であり、その務めを果たすようにと育てられた。やがて少女は首皇子の妃となり、その即位により聖武天皇の皇后へ。光明皇后の誕生だった。だが、聖武天皇の世になってからも権力をめぐる策謀や戦いは止むことなく、追い討ちをかけるかのように天変地異や流行病が次々と襲いかかる。女人として、母として、皇后として、自らはどのように歩むべきなのか。悩み苦しんだ末に光明が辿り着いたのは、この国のすべてのひとびとが安らかに暮らせるよう、祈りを捧げるための大仏を建立することだった――。幾多の困難を乗り越えながら、国を照らし続けようとした女性の生涯を辿る、珠玉の歴史長編。