南部 もう一つアメリカ

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本書は、今まで比較的知られることの少なかったアメリカの南部について、日本の読者により正確な理解を求めようとした本である。
　一九七三年に先輩や友人と共に出した『アメリカの南部』（研究社）が好評をもって世に迎えられたのは大きな喜びであった。『アメリカの南部』は一〇人による分担執筆であったが、私はその「総論」の部分を担当した。本書『南部――もう一つのアメリカ』は、この「総論」の部分で示した南部、あるいは南部とアメリカについての私の考え方を、さらに展開させたものである。本書をまとめるにあたって、他にも既発表のいくつかの論文η歴史と地理』『アメリカ研究』『国際問題』『流動』『エコノミスト』『史苑』『世界経済』などに寄稿した諸論文、『アメリカの文化』第四巻。加藤秀俊編『多様と統一』〔南雲堂〕に所収の「南北戦争の意味したもの」など）を下敷にしているが、それぞれ全面的に補筆改稿している。（「はしがき」より）
目次
はしがき
Ｉ　南部とは何か
　１　地理的範囲
　２　自然環境
　３　南部とは何か
Ⅱ南部の歴史
　１　植民地南部と旧南部
　　インディアン、スペイン人、フランス人　イギリス植民地　旧南部社会　黒人奴隷制
　奴隷論争と南北戦争への道
　２　南北戦争と「新南部」
　独立・敗戦・再建／　戦争と再建の波紋／　悲劇的な「新南部」／　大恐慌とニューディール
　３　第二次大戦後の南部
　工業化の進展／　農業の多角化と合理化／　都市化とその軋礫／　セグリゲイションの崩壊／　一党制の後退／　黒人の政治進出
Ⅲ　南北戦争の波紋
　１　勝った者の歴史
　南北戦争への国民的関心／　「栄光の戦争」／　敗者の歴史／　敗者のアメリカ史／　勝者の南北戦争論
　２　忘れられた戦争の遺産
　無視された南北戦争の遺産／　黒人を裏切った奴隷解放／　「一八七七年の妥協」／　無計画な経済再建／　植民地化する南部産業／　小作人農業／　より南部的な南部の出現／　神話の発生
Ⅳ　神話と歪み
　１　「新南部」の神話
　神話と軋礫／　「新南部の運動」／　ドーソン、グレイディ、ハリス／　トンプキンズ、エドモンズ／　指導者たちの共通点／　幻想の「新南部」
　２　苦悩する南部知識人
　神話の時代／　現実の衝撃／　メンケンの南部批判とキャッシュ／　深まる南部神話への幻滅と批判／　神話の破壊／　悩める南部知識人
　３　リベラルからデマゴーグヘ（詳細略）
Ⅴ　再生する南部
　１　対抗文化の伝統（詳細略）
　２　変貌する南部（詳細略）
　３　南部から学ぶアメリカ（詳細略）

9784130060844