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人間と宗教との関係、人間はなぜ宗教を営むのかという問題、とりわけ、人間はどういうふうに宗教を生みだしてきたのかという問題をめぐって、まことに粗雑ながら一応の関連領域を概観してきた。そして筆を欄くに当ってゆくりなくも心に浮かぶ思いは、この叙述は終りではなくて開始に他ならないという、新たな緊張と期待と不安の混交である。
つまり、私は実は自分と宗教との関係、自分はなぜ宗教と不離不即の奇妙な付き合いを続けてきたのか、それはいかなる原因に基づくのかという問題の前に立つために、 その準備段階としてこれまで書いてきたのだ。 いかなる形であれ、「書くこと」は自分を追いこむ行為であるということを、今更ながらしたたか思い知らされている。
このような大それた題で、しかも支離滅裂な記述に終始するとは、とても専門家のすることではなく、一介のデイレツタントにのみ可能な(つまり専門家の憫笑によって許容される)知的放埒である。私は宗教学の専門的研究の機会を与えられながら、よそ見ばかりして禁欲的精進の道を逸脱した者であるし、人間学の方面でも正規の勉強をしたわけではなく、ただ自分の関心に即してのみ少しばかり誓ったにすぎない。その他の学問領域に関しても、「つまみ食い」的接触で、まさに言葉の真の意味で私は半可通(ディレッタント)なのである。そのような者の書いた本に、いったい客観的な価値があるのかどうか大いに疑わしいが、宗教や人間に興味をもつ一般の読書人に、こんな見方もあるのかと参考になるならば望外の喜びである。(「あとがき」より)
目次
序章 人間の学としての宗教学のために
1 宗教の現代的状況/ 2 現代の宗教変容の意味/ 3 宗教の起源を求めて/ 4 宗教への人間学的アプローチ/ 5 宗教の人間学的定義
第一章 宗教の座――人間の脳
1 身心問題/ 2 生の営みと神経系/ 3 人間の脳の構造と機能/ 4 大脳両半球の分業と協力/ 5 脳の進化と宗教/ 6 日本人の脳と日本宗教
第二章 宗教の系統発生――初期人類と宗教
1 ヒトの素姓/ 2 ヒトヘの助走(霊長類から原人まで)/ 3 狩猟人の精神生活(旧人)/ 4 呪術の時代(新人)/ 5 中石器文化――転換の時代
第三章 宗教の個体発生――個人と宗教
1 系統発生と個体発生/ 2 本能と学習/ 3 幼少期と宗教/ 4 青年期と宗教
第四章 宗教の進化
1 宗教史の動力学/ 2 哲学的人間学とその宗教論/ 3 原始宗教/ 4 古代宗教/ 5 近代宗教
終章 宇宙のなかの新しい地位
注
参考文献
あとがき